特徴・概要
動的耐震診断システムは、
①診断機器を建物に設置して小さな地震を起こし、
②そのときの建物の揺れを計測して、
③建物が震度いくつの地震まで安全性が高いかを推測する
システムです。
さらに、地盤調査も併せて行うことで、
④地盤と建物との共振可能性を調べる
システムです。
加えて、耐震改修後に再計測することで、
⑤耐震改修(壁補強)の効果がわかる
システムです。
なぜ動的耐震診断が必要か
宮城沖地震、東海地震、東南海地震、南海地震と、予想される大地震の脅威がマスコミで大きく報じられています。
被災による損失は最大600兆円ともいわれています。
被災後の膨大な処理費用よりも、事前対策費用の方がはるかに少額ですむことから、国や地方公共団体が耐震改修のための補助金を予算化しています。
しかしながら、戸建住宅の耐震改修工事は遅々として進んでいません。
動的耐震診断システムは、「建物の安全性がもっと具体的に表示され、なおかつ耐震改修工事の効果が目に見えるようになれば、もっと耐震改修が促進されるのでは」との声に応えるべく、開発されたシステムです。
動的耐震診断でわかること
小さな地震で建物を揺らして計測する動的耐震診断でわかることは、木造住宅の耐震性を判断する上で、もっとも大切な、「建物全体の硬さ(揺れやすい建物かどうか)」と、「建物各部の硬さのバランス(揺れ方のバランス)」です。
これらは、小さな地震にも大地震にも共通に現れる建物の特性です。
このデータをもとに、「震度いくつの地震まで安全性が高いか」を解析して数値で表しています。
動的耐震診断を行う意義
木造住宅は、建物の老朽度や使用している材料の質、建築時の施工精度などが個々に異なっていて、年数を経た建物の耐震性について、建築時の図面だけから導き出すのは難しい一面があります。
したがって、建物を実際に揺らして建物の現在の状態を実測することに大きな意義があります。
また、小さな地震の揺れから大地震時の被害を推測するこの手法には、限界もあります。
この点を克服するため、実際の建物に地震に相当する力を加える試験を行いました。これにより、動的耐震診断の精度を確認し、さらに、地震により建物に加わる力と建物の被害の関係を詳しく調べることで、小さな地震の揺れから大地震時の被害を推測するこの手法の精度向上を図っています。
精密耐震診断は必要なの?
建物の耐震性は、
①壁や筋かいがどれだけたくさん入っているか(建物全体の硬さ)、
②壁や筋かいがバランスよく入っているか(建物の揺れのバランス)、
③柱や梁、壁などの構造部分が丈夫に緊結されているか(接合部の耐力)、
④基礎や土台が頑丈か、
などがポイントとなります。
動的耐震診断でわかるのは、そのうちもっとも大切な、①と②の部分です。
残りの③④の検討が必要なこと、また、より多角的な検討を行うためにも、動的耐震診断は、簡易耐震診断・精密耐震診断で耐震補強が必要と判定されたときに利用されることをお奨めしています。
表面波探査法(地盤調査)を併用して行うことによって、調査地の地盤が軟弱地盤かどうか、また、想定される地震が起きた場合にどれくらい揺れるかを算出します。
表層地盤(工学的基盤から上)の固有周期・応答倍率を調査し地震波の伝わり方の分析をします。そして、建物と地盤の周期、応答倍率調査結果から、その物件の地盤と建物の共振可能性を判断します。